脳の省エネルギー

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政治的なら右派や左派、大学受験なら理系と文系、賭けてみるならイチかバチか。物事を2つに分けて考えることは多い。4つや8つに分けるよりも話が早いし、2つの間にだっていろいろな段階があって当然だろうけれど、段階はネグられる。

2つに分けてしまう理由は、どうやら人間の脳がそのように進化してきたかららしい。人間の脳は体のエネルギーの20%を消費する大喰らいなので、余分なことを考えているとお腹がすいて仕方がない。そこで生物の進化の途中でいろいろな思考スタイルから近道を探り当ててきたが、そのうちの一つが二分思考だというのだ。もし二分思考で失敗が多ければそういう進化はしなかっただろうが、それなりにうまく行ったので今の人間がいる、というわけだ。

わからない事態に出くわすと原因を知りたくなる。これもそのように進化したと考えられるそうだ。原因がわかればその事態に次回でくわしたとき自分の身を守ることができるので、この性質は生存に役立つ。ところがどうにかして知った原因が実は間違いはないかという疑いは自然には出てこない。いたずらに疑っても生存にはあまり役立たなかったのだろう。太陽が地球のまわりを回っていたころ、それは何かの力が太陽を押しているからに違いないと考えられた。地球が太陽の回りを回ることになっても、地球を押して公転させる力を探そうとする。原因がないのに地球が公転するはずがなかったのだ。しかし原因の認識が違ってもそれで生活に困るわけではないので、生物の進化としては疑うよりも原因を断定してしまう方に脳を仕向けてきてエネルギーを節約したようだ。

うわさ話を聞いたときにウラをとるにはエネルギーが必要だ。エネルギーは節約したいので、噂の話し手がどんな顔をしているか、どんな声を出すか、今までにウソを言った人か、ありとあらゆる近道を使って、ウラをとることなく噂の真偽を断定しようとするのだそうだ。そのように進化してきたので、「近道断定」をする脳に抗うのは無駄な抵抗だと言った心理学者もいた。私はその言葉を信じて、これからも無駄な抵抗を続けたい。