旧米軍上瀬谷通信施設跡地の汚染土壌の完全除去を求める署名活動がスタート

伊形順子

いま、横浜市北西部、相鉄線の瀬谷駅近くにある旧米軍上瀬谷通信施設跡地をどうするかが大きな議論を呼んでいる。

1.旧米軍上瀬谷通信施設とは

旧米軍上瀬谷通信施設は2015年6月に米国から返還された。横浜市瀬谷区・旭区に位置し、国有地(45.2%)、市有地(9.4%)、民有地(45.4%)をあわせて約242ヘクタールの広大な土地である。民有地の多くは農地として利用され、広々とした農地の景観と豊かな自然環境が残されている、首都圏でも貴重な場所だ。敷地内には相沢川と大門川が南北に流れ、和泉川の源流になっている。全体的にはほぼ平坦な地形で、山坂の多い横浜にとっても有効に活用できる限られた土地である。

2.横浜市の跡地利用計画

横浜市は将来的にどのような街にするのか大きな展望を示さず、市民から送られてきたパブリックコメントを精査することもなく、「国際園芸博覧会」を実施すると強引に進めている。その内容は、
 2027年花博「国際園芸博覧会」
 開催期間2027年3月~9月
 博覧会区域 100ha
 博覧会場建設に240億円 運営に360億円
 参加者人数 1,500万人、有料来場者数 1,000万人以上

というもので、2019年「国際園芸協会」に申請し承認を得ている。(市のホームページで公表)

ところが、ここへきて「超大型テーマパーク」開発を計画し開発に名乗りをあげていた相鉄ホールディングスが、検討を断念した。2021年5月31日の朝日新聞によれば、新交通システム計画――相鉄線瀬谷駅付近と上瀬谷跡地を結ぶ新交通システムを2027年までに開業させる方針だったが、利用客の見込みが立たなくなったという。

相鉄が断念後、横浜市は花博向けにバス輸送などの代替策を検討している。また花博開催の後は、「観光賑わいゾーン」「農業振興ゾーン」「公園防災ゾーン」「物流ゾーン」と区分けして跡地利用の計画を進めている。

3. 第一の優先課題は汚染土壌の撤去

住民からの要望でも、農業と緑地・河川を残した公園、スポーツ・レクリエーション施設、教育・文化施設、医療福祉施設、防災拠点施設、などの建設が挙がっているが、何よりも優先させるべき課題は、上瀬谷跡地内にある汚染土壌の完全撤去であろう。

防衛相が2019年から20年に跡地の国有地部分で行った調査では、基準値を超える鉛と鉛化合物、ヒ素とヒ素化合物、フッ素とフッ素化合物が確認された。県は跡地の土地区画整理事業の環境評価方法に対する意見書で、対策や実施主体を明らかにすることを求めていたが、そのまま放置されている。

4. 上瀬谷跡地・汚染土壌の完全撤去を求める署名がスタート

2021年5月22日、瀬谷区地区センター会議室で、米軍上瀬谷基地返還と跡地利用問題懇談会(略称:上瀬谷基地懇)が主催して「上瀬谷米軍跡地の汚染土壌の完全撤去を求める署名」がスタートした。8月末までに団体100筆、個人1万筆を目指す(ウェブサイト Change.org も活用。)

防衛相や横浜市が具体策を示しておらず、また、土壌汚染対策法は掘削除去が本来の主旨だとして、同会は防衛大臣と横浜市長に完全除去などを求める考えだ。
22日は、同会代表委員の高橋勝也さんが参加者に協力を呼び掛けたほか、静岡理工科大学元教授で農学博士の惣田昱夫(そうたいくお)さんが、土壌汚染対策の変遷などを説明した。

横浜市は、2020年9月、基準値の超過地点について国が適切な対策をした後に市へ譲渡するよう要望していることを示した。また、国との協議次第では区画整理事業に合わせて対策を実施する可能性もあるとして、「現状の土壌汚染の状況を把握する」としている。

【横浜市長殿】 【防衛大臣殿】に対する要望
要望項目
•汚染土壌は完全に除去すること
•汚染土壌が完全に除去されるまでは跡地開発の工事は着工しないこと
•汚染土壌について市民にわかりやすく情報提供すること

付記.長年上瀬谷米軍跡地で活躍している市民グループを紹介します。

瀬谷環境ネットの運動・・・未来に引き継いでいくべき瀬谷遺産、瀬谷区辺地域の自然環境にかかわる活動をしている。2006年12月に発足。瀬谷区の住民を中心としたボランティア団体。

活動の理念
生き物との共生、生命の循環を創ること。メダカ・ドジョウ・ゲンゴロウが泳ぎ、カワニナが這い、ホタルが舞い、コウノトリ・トキが飛来する。そんな環境づくりを目指している。

活動
毎月1回の定例活動。複数の市民参加イベント。2009年より2016年まで瀬谷区にある水田での昔ながらの米づくりを通じての小学校環境農園事業を担当していた。

瀬谷の農業
瀬谷は市内最大の農業地帯。生産現場と消費者の距離が近い消費者にとって、生産の現場を見ることで食育や農育などの教育的効果、農地の持つ安定性、防災機能、生物の生息場所としての機能など非常に大きな恩恵を受けている。

市民の手で環境再生
瀬谷の身近な自然環境を守っていくこと、瀬谷の農業を維持・存続していくことは市民のとって大切な問題。農家の方が田んぼを耕し、イネを育て続けてくれることが、私たちの生活を支え、同時に地域の自然環境を守ることにつながっている。少しでも農家の方への支援ができないかと考え、特に水田において耕作を続けるのが大変なことから放棄されてしまった場所に、土地所有者の方と相談の上でできることを探していくという形で、瀬谷の環境を守っていきたいと考えている。

和泉川へ、活動の場を広げる
2010年からは、和泉川へと活動の場を広げた。景観が大変美しく地域から親しまれている川ですが、一部の心ない人によりタバコの吸い殻、空き缶、レジ袋、お菓子の袋等がポイ捨てされ、川の魅力を低下させている。地域の町内会や行政と連携しながら、地道な清掃活動をしている。近年問題になっているマイクロプラスチックの元となるプラスチックゴミの回収には特に力を入れている。

三ツ境駅で署名活動(2021年6月14日)上瀬谷懇の人々

米軍上瀬谷通信基地跡地

出典: カナロコ

横浜市の計画

出典: 横浜市/タウンニュース

参考: 米軍上瀬谷通信施設跡地の賢い利用を願う