統計と因果関係 <書籍紹介>

FO

たとえ統計的に関係があっても、何かが原因で(ウーロン茶を飲む)別の何かが結果になる(長寿である)とは限らないという話を書きました。

 『ウーロン茶を飲む人は長寿である』

ウーロン茶の話は私がでっち上げた “思い違い” の例ですが、もっと真面目な例を引いて説明しているのが『原因と結果の経済学』です。相関があってもなぜ因果関係とはいえないのか、きちんと説明してくれます。さらに、どこに注意すれば因果関係を探るうえで統計や相関がツールとして役立つかも紹介されています。おおざっぱな感覚をつかむにはよい本です。

中室牧子・津川友介 著、ダイヤモンド社、2017 
「原因と結果」の経済学-データから真実を見抜く思考法-
ISBN:9784478039472

もうひとつは「原因とは何か」という問いを投げかける本、『医学的根拠とは何か』です。
この著者が 薬害や公害や食中毒に関与してきた経験から、慌てて読むと「相関があるからその物質が原因だ」と言っているように見えてしまいますが、それは誤解です。落ち着いて読めば、相関や統計は原因を特定するための手段の一つとして使われていることがわかります。原因に迫るためには、ただ統計をとればいいわけではなく、慎重で緻密な取り組みが必要です。

おもしろい洞察が2つあります。
ひとつは「原因と結果が1対1だという誤解」です。確かに、ある結果につながる要因はたくさんあるのが普通なので、要因を1つだけ取り上げてそれを「原因」と呼んでいては考察や議論の妨げになります。

2番めは「原因」が完全に解明されていなくても被害の拡大を止められることです。統計や相関から「要因として大きいらしい」ことがわかった段階でそれを「原因」とみなして対策を打てば被害はそれ以上拡大しません。水俣病やO-157食中毒が事件となってしまった反省として、とても説得力のある主張です。

気候変動や核施設からの被害など、解明のレベルはまだ完全ではないし、「原因と結果が1対1だという誤解」のもとでは将来も完全な解明はあり得ないでしょう。それでもおおきいらしい要因を「原因」とみなして対策を打てば、何も対策しないよりずっと将来がよくなるだろうし、少なくとも、良くなる確率は高められそうです。

津田敏秀 著、岩波書店、2013
医学的根拠とは何か
ISBN: 9784004314585

同じ著者の『医学と仮説-原因と結果の科学を考える-』には、前の「ウーロン茶」で触れたパールの “統計から因果関係を探り出す” ためのグラフ、DAG (非巡回有向グラフ) が触りだけ紹介されています。パール自身は単に Causal Diagram (原因図)と呼んでいるようです。

Judea Pearl ユデア・パール