どうする?!日本の食料 セミナー報告

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猪股美恵

12月6日に安田節子さんをお呼びして「どうする?!日本の食料」と題するセミナーを開きました。会場とズームによる開催の結果、東北・九州・近畿・中部地方と多方面からの参加を得られました。なぜこのコロナ禍でこんなに日本の食糧事情に関心が寄せられるのかと思いますが、今年3月頃マスクやトレぺに殺到する店頭の光景が食料だったらと想像できる人たちが大勢いたということではないでしょうか。

講師の安田節子さんは30年近く食の安全について追求されてきました。安田さんは近年種子に関する法律が次々と改悪されている話から始められました。

2018年に廃止になった種子法とは、日本の食糧安全保障の土台となっていた法律で、米、麦、大豆、の品種開発を公的機関が責任を持ち、農家に安く種を供給し安定的生産を続けるための法律でした。ところが2017年に廃止を閣議決定し、2018年規制改革推進会議が決定しました。さらにその廃止と同時に規制改革推進会議は公的機関が保有している育種素材や施設を無償で民間企業に提供する事とする「農業競争力強化支援法」を提案し成立させました。

今年は種苗会社の知的財産権を守るためとして種苗法を改悪させました。これによって今まで続いてきた農家による自家増殖は、育成企業権が優先され、自家増殖等違反すれば1000万円以下の罰金、10年以下の懲役が科せられるという報告でした。これからはモンサント等多国籍種苗企業の自社特定農薬とセットになった種苗を買わされ続け、遺伝子を操作する遺伝子組み換えやゲノム編集した種子も買わざるを得なくなるだろうとのことでした。

さらに今年4月規制改革推進会議がまたしても農業競争力強化支援法を受けて、大規模コメ生産者・米輸出業者に有利なように基準・検査を簡易化する計画を提言し、7月閣議決定しました。ついに私たちの主食であるコメにまで多国籍種苗企業の手が伸びてきました。

前記ゲノム編集食品については、2018年米国がゲノム編集食品の栽培を規制しない方針を打ち出した3か月後、日本政府は「ゲノム編集の技術を成長戦略の中心に位置づけ、迅速かつ確実に実行していく」と発表しました。

ヨーロッパをはじめ世界は環境や食の安全に対する意識が高まってきていますが、日本はFTA、TPPなど自由貿易協定を結ぶたびに日本の基準を下げ続けています。その結果、今後食料を輸出したくても低基準のため断られることになるだろうとのことでした。

最後に日本の食糧自給率は37%と先進国中最低の数字、穀物自給率はもっと低い28%しかない事実、世界的に問題になっている除草剤の主成分であるグリホサートが日本で輸入小麦を使う多くの市販パンから検出されたという報告もありました。

これからは皆がこうした情報を共有しながら、良いものを食べ、学校給食を有機食材にしていくなど、できることからしていこうというメッセージがありました。

安田さんの報告の後、山形置賜から参加しておられた菅野芳秀さんから農業現場からの報告をいただきました。近年国は大規模農業支援にシフトしたため、小規模農家は高額な今のコンバインを買い替えるにも補助はなく、使えなくなったらやめざるを得ないなど、小規模農家の現状を伝えていただきました。農業の競争力強化といっては多くの小規模農家を切り捨てています。どこと何を競争するというのでしょうか。競争するなら自給力を競い合ってほしいものです。