排外主義とのたたかいが重要な争点に

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白川真澄

高市新総裁の前途は難路つづき

高市早苗が自民党の新総裁に選ばれた。すんなりと新しい首相の椅子に座るかと思われたが、出だしから躓いた。連立政権の枠組みを広げようと画策して、逆に公明党の離反を招いた。
それだけではない。自民党切っての右翼保守である高市が、その政治信条をどこまで貫けるかも不分明である。安倍晋三でさえそうであったが、最高権力者の座に就くと逆にさまざまの政治的諸関係の制約を受けることになるからだ。靖国公式参拝は右翼保守層を自民党に呼び戻すために求められたはずであったが、日中関係や改善されてきた日韓関係の悪化を恐れて見送らざるをえなかった。あるいは「アベノミクスの継承」を謳い財政出動と金融緩和(金利引き上げの見送り)を推進したくても、円安によるインフレを加速し物価高対策に打つ手をなくすリスクが足かせになる。

外国人排除の政策に力を注ぐ危険性

八方ふさがりの感のある高市だが、政権を出発させれば力を注ごうとしているのが外国人排除の強化である。外国人の入国数の制限やスパイ防止法の制定が目論まれている。これには国民民主や維新が賛同していて協力を得やすい。何よりも参院選での参政党の躍進が示すように、「日本人ファースト」への共鳴が人びとのなかに広がっているからだ。「日本人ファースト」とは、「日本人が貧困化」している(安藤参政党幹事長)のだから、外国人に生活保護を給付するよりも日本人の福祉に税金を優先的に使うべきだ、という発想だ。この福祉排外主義の考えは、福祉国家の北欧をはじめ欧州を席巻していて極右政党を伸長させている。
いま日本でも、生活に希望が見出せず不安を感じる人が増えている。「暮らし向きにゆとりがなくなってきた」と感じる人は4年前の36.3%から61.0%にまで増えた。生活を不安が覆う「不安社会」になると、その原因を在日外国人の増大に見出す錯視が生まれ、福祉排外主義にたやすく共鳴するようになる。
外国人を不安の原因と見る錯視はSNSを通じたデマ情報の拡散によって強まっている。高市は外国人が奈良公園の鹿を蹴り上げたと言い張ったが、動画に写っていた人が外国人かどうかは判別できない。憶測にすぎない。あるいは外国人が増えれば凶悪犯罪が頻発し治安が悪化する、と主張される。しかし、外国人はこの20年間で2倍近く増えたが、その刑法検挙件数は64%も減っている。あるいは生活保護の3分の1は外国人が受給している、と言われる。だが、外国人の生活保護受給世帯は2.6%にすぎない。また確かに中国人をはじめ外国人による都心の不動産への投資が急増(24年には63%増)し、マンション価格やアパートの家賃が高騰し、住居が手に入らなくなっている。しかし、これは世界的なカネ余りが続くなかで、投機目的のマネーが円安の日本に殺到しているからである。外国人であれ日本人であれ、転売=投機目的の不動産購入をきびしく規制するべきなのだ。

日本の社会と経済を支えている外国人との共生を

生活の不安増大や社会の不安定化の原因を外国人の増大に求める人びとは現実を無視している。すでに日本では376万人、人口の3.04%の外国人が暮らし、うち230万人の人びとが社会と経済を支える場で働いている。農業・漁業、介護・医療、建設、コンビニなどで、彼ら/彼女らの姿を見かけないことはない。その多くは非正規で働き、賃金が低く、人権も定住権も保障されていない。人手不足の日本では、2040年には674万人の外国人労働者が必要になるとされるが、彼ら/彼女らに快く働き生活してもらわねばならない。
経済成長を唱えながら外国人の入国を制限する、つまり労働力を減らすべき、と矛盾した主張をする政治家が多い。私たちがめざすべきは、異なる文化や言葉をもつ外国人と地域で交流し共生する社会である。

2025年10月13日記、(「つながる通信」2025年10月)