福井県の水月湖の世界標準

吉岡正子

福井県の水月湖に堆積する「年縞」(ネンコウ)が、現在世界標準になっていることをご存じだろうか。地球の温暖化を考えるうえでせめて地球の気候の歴史を知っておこうと適当な本を探していて知った。福井県の水月湖の湖底をボーリングして発見された年縞が年代を測定する貴重な物差しになりそうであるということは、数年前にNHKの番組「サイエンスゼロ」(もしかしたらほかの番組であったかもしれない)で見ていたので知ってはいたが、それがのちに世界標準にまでなっていたことは知らなかった。

一般的に発掘された遺物などの年代を測定するのには、放射性炭素年代測定法が使われている。この方法は炭素の同位体(C-14)の半減期が5730年であるということを利用したものである。しかしその濃度は年代や地域・環境によって一定ではないので正確な物差しにするためには補正が必要で、木の年輪年代の物差しで補正していた。木の年輪年代はその性質上1万3900年までの補正しかできなかったのだか、水月湖の年縞が7万年までの正確な物差しとなりC-14年代測定法の補正に使われている。

また、年縞に含まれている植物の花粉の解析により、その花粉が含まれている年の植生がわかりそのことから水月湖周辺の気候変動を推測することができる。水月湖の堆積土の花粉からはその周辺は寒冷期で白樺や針葉樹のシベリアやカナダのような気候、温暖期ではカシやシイの西日本の常緑樹の気候ということがわかっている。

年縞について

年縞とは湖底などに木の年輪のように泥などが1年ずつ規則正しく連続堆積(たいせき)した地層のこと。

水月湖の年縞は1980年代に開始された三方湖畔の縄文遺跡、鳥浜貝塚の発掘調査研究の一環として実施された水月湖の湖底ボーリングで1991年(平成3)に存在が確認された。長年にわたり泥の堆積が続けば湖は泥で埋まってしまうが、水月湖は東にある三方断層の活動により定期的に地盤が沈下しており埋まることがなかった。また直接流入する河川がないため鉄砲水などによる土砂や砂礫(されき)の流入、湖底の攪乱(かくらん)も経験していない。さらに水深が深く下層は酸素不足であるため湖底に魚類など生物が生存できない。これら偶然の条件が重なり年縞が形成されたため、水月湖は奇跡の湖ともよばれている。(ニッポニカ:年縞から抜粋)

放射性炭素年代測定法について

原子は安定状態のことが多いが一部の原子は不安定な状態になっていて、そんな原子が含まれるものを放射性物質という。不安定な原子が安定した原子に変わっていく途中で余分なエネルギーを放射線として外に出す。放射性炭素のC-14は大気中に一定の割合で含まれていて、動植物は呼吸や食餌や光合成によってC-14を体内に取り込んでいる。動植物は命を失うとC-14を取り込まなくなり、すでに取り込まれていたC-14は、半減期が5730年なので、1.44年に5730分の1ずつ減っていく。試料(発掘された遺物など)に含まれるC-14の割合を調べて大気中のそれと比べれば、いつ頃寿命を終えたかがわかる。

以上が、現在気候変動を推測するためにどの様な物差しが使われているかでした。
このテーマは続きます。
次回は、氷期に急激な温暖化があったこと、そのことがマンモスの絶滅の原因だったかもしれないことなどについてです。