伊形順子
◎カジノを含むIR横浜誘致に、私が反対する3つの理由
1. 横浜市の品格の問題
横浜は、伝統のある都市。開港160年の港をもつ。歴史的に貴重な場所や建物を持っている。その港をラスベガスのような賭博場にしてはいけない。横浜市長は、家族連れで憩う山下公園にある氷川丸の隣の山下ふ頭に24時間営業の賭博場を作ろうとしている。一旦、カジノ業者と横浜市が契約をすれば、30年・40年と居座ることになっている。私たちの子や孫の世代まで続く、負の遺産になる。
2. 市の予算をどこからもってくるかの問題
林市長はこう言っている。「少子化により、横浜市の予算が将来的に財源不足になる(かもしれない)。横浜にカジノを含むIRを誘致し、その税収をあてにして市の予算に充てる。」私はこう思う。「人の不幸をあてにして市の予算にするなどは前代未聞。海外では、カジノで全財産を失い投身自殺をした人がいます。カジノ依存症になって、横浜市の為に、10万、100万、1000万円負けてください、などと言えない。」
3. 民主主義の問題
カジノ賛成の林市長も、自民党市議会議員も、公明党市議会議員も、選挙のときにカジノを誘致するとは言わなかった。大阪市・大阪府はカジノを含むIRを誘致すると言って選挙で当選した。横浜市では、市民に問うてないのに、2019年8月22日に林市長は「カジノを含むIRを誘致する」と突然記者会見をした。これは、民主主義にかかわることだ。新聞発表では横浜市民の70~80%がカジノ誘致に反対している。「勝手にカジノ誘致を決めるな。市民の声を聞け。」私は、カジノの是非を決める住民投票を求めている。横浜市で住民投票が実現すれば、それは民主主義を取り戻す一歩となる。全国的にも励みになる。
◎国の動き
1. 2016年推進法
2016年特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(2016年法律第115号)が議員立法で成立。カジノを含む特定複合観光施設(IR)の整備が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに財政の改善に資するものである。
2. 2018年整備法可決
2018年、特定複合観光施設整備法を国会に提出し可決。7月27日に公布された。IRが我が国の社会にもたらすべき新しい公益と考えられる。公共政策としての『日本型IR』の意義を強調している。
カジノ業者は、カジノ粗収益の15%を国に、15%を認定都道府県等に納付する。
IR事業について、それが本当に『新しい公益』につながるのか、検証を要する。IR区域は都市の景観に大きい影響を与える。当然それは、周辺地域に対する正の外部性でも負の外部性でもありうる。
片桐直人(大阪大学准教授)
3. 国交省の基本方針提出期限は2020年7月20日
自治体は基本方針に従って実施方針作成・業者選定・区域整備計画作成を実施しなければいけない。しかし、横浜市は基本方針案を手に入れ、すでに動きだしている。)
4. 国への、区域整備計画の申請期間は2021年1月から7月
この申請を林市長にさせないように、カジノ誘致反対の人々は動いている。
◎横浜市長や市役所の動き
カジノを含むIR誘致のための調査名目で予算を毎年1000万円計上し、すでに4000万円使う(市長選のあった2017年は計上せず)。
2019年は、
- 4つの区で市民説明会(6月25日、26日)
- 林市長は記者会見で「横浜にカジノを誘致する方針」と発表(8月22日)
- カジノ誘致の横浜市独自の調査の費用として、2億6千万円の予算を通す(9月20日)
- 6月の説明会は4つの区のみだったので、12月から翌年にかけてすべての区(18区)で市民説明会を行うとの発表
2020年には
- 次年度予算にカジノ関係の予算4億円を計上し、市議会で可決(3月)
◎大西つねきさんの呼びかけ
林市長「横浜誘致」宣言(2019年8月22日)を受け、れいわ新選組の大西つねきさんが「市民が一丸となって、住民投票を求める法廷署名と林市長リコールの法廷署名を求めよう」と提案。90人集会と約200人集会を青葉区あざみ野で開催(9月12日)、1200人の集会を中区の関内ホールで開催(10月3日)。
◎多くの団体が法定署名に向けて動き出す
住民投票を求めたのちにリコールしようとするグループや、住民投票は市議会で否決されるだろうからはじめから林市長のリコールを求めるグループも活動を始めた。住民投票には有権者300万人の1/50にあたる約6万人の法定署名が必要だ。一方でリコールには有権者の1/6にあたる約50万人の署名が必要になる。どちらが有効かはやってみなければ分からない。私は両方の受任者に申し込んでいる。どちらも目的はカジノ誘致を止めることにある。全力で取り組む必要がある。
林市長は誘致で年間1200億円の増収が期待できると話したが納付金収入は事業者の粗利益の15%だ。この数字はカジノで8000億円近い儲けがないと達成できない。シンガポールのマリーナベイ・サンズの昨年の収益が約22億ドルなので、その3倍強の規模。市民らが相当負けてギャンブル漬けにならないとこの数字は成り立たない。一方、想定通りの売り上げがなかった場合は、事業者が結ぶ実施協定により、自治体が損失補填をするかもしれない。カジノ客の8割は国内客と見られ、本来は地元で使われるべきお金がカジノに吸い込まれ、消費力が奪われる。アメリカの依存症調査によるとカジノ周辺地域の人ほど常習者になる。依存症が増えれば、失業や家庭崩壊による生活保護費が増加する。リスクも考えに入れ、市民が判断すべきだ。
鳥畑与一(静岡大学教授)
カジノの是非を決める横浜市民の会はまず住民投票を求める活動を始めている。4月24日から署名活動開始の予定で準備していたが、コロナウィルスの影響で9月開始に延期を決めた。カジノの是非を決める横浜市民の会には、2020年3月末の時点で35000人が受任者登録をした。
一人から始めるリコール運動も受任者を積極的に募集していて、3月末の時点で25000人が受任者登録をした。7月と8月に署名活動の予定だが、コロナウィルスの影響で変更される可能性もある。
カジノ横浜誘致反対磯子区の会には、3月末の時点で1500人が受任者登録をした。
横浜に民主主義を取り戻す為に、着実に行動していくことが重要だ。今回の活動を通して、代表者たちを批判ばかりしている人々の愚に気付いた。それぞれやり方は違っても、カジノ横浜誘致を止めるために、具体的に行動している人々が偉い、そういう人々が大切だということが分かった。