福島県大熊町の復興に目途がない

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猪股美恵

まだ世界的コロナパンデミック状態が続いているというのに、何が何でもオリパラを開催を押し通す政府の姿勢には憤りを覚えます。菅首相は先日も東北大震災から復興した姿を見てもらいたいと発言しているが、原発事故で被害を受けた地域の今の姿こそ世界中に見せてほしい。

5月29日福島県大熊町の現状を見に行った。案内してくれたのは、大熊町で町会議員をしておられる唯一の女性議員木幡ますみさん。木幡さんは大熊町に自宅と田んぼ、畑を持っていながら今も帰宅困難地域に指定されているため(写真1)、賃貸住宅で暮らしておられます。自宅は現在立ち入り禁止のフェンスが立てかけられています。家の中はタヌキとサルとイノシシに占拠され、好き放題にされているとのことです。(自宅がある人は公営住宅(写真2)には入れない)

(写真1)帰宅困難地域に指定されている自宅前

道路からの入口に簡易バリケートが置かれている

(写真2)自宅がある人は公営住宅には入れない

車止めとフェンスの先に戸建てが3軒ほど見える

大熊町は2011年原発事故が起きる前までは1万5千人の人口でしたが、現在は200人(うち100人は東電関係者)。

大熊町では現在常磐線大野駅周辺を特定復興再生拠点区域として除染を進めています。(写真3)しかしそのエリア以外では住宅に進入禁止のフェンスや鎖が敷かれて今なお放置されています。(写真4)

(写真3)特定復興再生拠点区域として除染を進める

パワーショベルが1台で作業中、背後に黒い袋が並んでいる

(写真4)住宅に進入禁止のフェンスや鎖があって今なお放置されている

JAの入口は道路に可動フェンスが置かれている。隣の店舗は入口に可動フェンスが置かれている

持って行った放射能線量測定器で測ってみると、除染された敷地は0.290μSv/h、その隣接する除染されていない敷地では4.552μSv/h。磐城市に避難していて偶々自宅の様子を見に来ていたご夫婦の話では、除染を申し込むと敷地の中だけは除染するが、一歩外は放射能濃度の高い林であってもやらない。しかも除染をしてもらったら、帰っていなくても3年後から資産税がかけられる。除染をすれば、そこに放置されている乗用車にも通常課税がかけられるとのことでした。

大熊町では先の見えない状況にもかかわらず、保育園や学校建設計画が持ち上がっています。

国が2年後には福島第1原発で増え続けるALPS処理水を海洋放出すると正式に決定したことを受け、大熊町に梶山経産相が4月13日、小泉環境大臣が4月17日に訪れ説明をしたとのこと。吉田町長は「国内外に対し、透明性の高い客観的情報を発信し、地元住民や国民の理解を得ること。全責任を国が持つこと」など伝えたとのことでした。

今回の取材を通して感じたことは、この大熊町は原発事故前は、自然豊かなゆったりとした風が流れる町であっただろうと思いながら、その町が今なお廃墟と化している悔しさが伝わってきました。

この現状を知っているのだろうか?菅首相は復興五輪、復興した姿を見てほしいと言っているが。