2023年統一地方選挙で躍進した日本維新の会とは?

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ピープルズプラン研究所・白川真澄氏に聞く

西村光子

2023年春の統一自治体選挙は、維新の会の大躍進が目立ちました。維新は、大阪府知事、大阪市長のダブル選挙に勝ち、奈良県でも自民の分裂という隙間をついたとはいえ知事選に勝利しています。地域政党に過ぎないという評価も、全国18道府県で県議124名を獲得、念願の「全国政党化」を果たしました。
考えてみると、自民が大勝し野党の敗北が際立った2022年7月の参議院選挙で、比例区の得票が、維新784.5万票(14.8%)、立民677.1万票(12.7%)と、維新が立民より多数を得ています。
また、『世界』2022年10月号の東京大学谷口将紀研究室・朝日新聞共同調査によると、イシューオーナーシップ(その課題=例えば、教育・子育て支援=に一番上手に対応できそうな政党はどれかを問う)有権者調査で、すべての領域で維新が立民に上回ったとあります。

このように躍進してきた維新の会を、どのように捉えればいいのでしょうか?
ピープルズ・プラン研究所の白川真澄さんに聞いてみました。

2023年統一自治体選挙で躍進した維新の政策の内実は?

西村:多くの市民が期待を寄せる維新の政策をどう評価すればいいのでしょうか?

白川:首都圏以外では地域の衰退・没落の危機感を新たな「成長・拡大」への幻想に誘導するものと言えるでしょう。その内実は、「行政改革」(公務員削減)・「身を切る改革」(議員の定数削減と歳費の削減)、「規制緩和=公共サービスの削減」です。成果を上げていると言われている教育政策も、実態は公立高校への支出削減と塾通いの補助金支給で、教育格差や、奨学金返済で貧困化する若者の問題を解決していません。

維新のネオリベ改革は世界では終わっている

白川:<減税、緊縮財政、民営化>の流れはネオリベラリズムと言われ、バイデン政権の「大きな政府」への転換に見られるように、世界的には終わったとされています。しかし、日本の場合は、政府への不信感のため租税抵抗感が異常なほど強く、ネオリベ改革(減税と行政改革)への支持や幻想が続いています。

また、大阪の場合は、新産業の創出・誘致といったビジョンはなく、大阪万博(2025年)、カジノ誘致などの巨大開発が争点になりました。朝日新聞の世論調査では、カジノ誘致に反対が43%、賛成が37%(府民)、反対が47%、賛成37%(大阪市民)と、反対が多数をしめています。ところが、カジノ誘致反対の人は大阪市長選では反対派の候補に投票すると答えた人が多かったが、知事選では吉村に投票するという人が多かった。住民投票を掲げた市民運動が市議会の反対派市議と結んで市長を交代させた横浜のような運動が作れなかったことが維新勝利に結びついています。

維新の組織戦略は・・・?

西村:維新がここまで躍進した理由は何でしょうか?

白川:地域から自治体の首長を獲得し、「改革」実績をモデルにしてその首長を政党の代表にしながら支持と勢力を拡大していく。1960年代後半から1970年代前半に革新自治体を全国で誕生させ、自民党を追い詰めた歴史的経験を想起させます。地域に根を下ろせない立憲民主党とは対照的ですね。それに、吉村のような新しい世代の政治的リーダーを登場させたことも大きいでしょう。

緑の党はどうする?

西村:緑の党の歩むべき道はどうでしょうか。

白川:政策的には、公正な増税による公共サービス(ベーシックサービス)の実施。
組織的には、地域から自治体の連携を図り、首長を取って、実績モデルを広めていく。維新と同じですが、実はそれはヨーロッパの緑の党がとった改革戦略=ミュ二シパリズムの実践です。